この記事の結論:婚礼の来館数や成約率を見える化するとき、最初にやるのはグラフを作ることではなく、数え方の定義を1枚の表に決めることです。「来館は組で数えるか」「2回目の来館をどう扱うか」「成約はどの日付で数えるか」「どの媒体から来た予約とするか」を決めないまま集計すると、表を作る人や月によって数字が変わり、比べられなくなります。データは、サイト上の行動(GA4)、予約、来館後の商談・成約の3か所に分けて持ち、予約番号でつなぎます。GA4には個人を特定できる情報を送らず、フェア予約の完了までを計測します(来館と成約を数えるのは自社の記録)。
株式会社bundlyzeでは、データ分析の基盤を AWS 上に組む仕事と、業務システムの要件定義に始まり、保守運用までを担う仕事をしています。この記事は、結婚式場やゲストハウス、ホテルの婚礼部門、フォトウェディングのように、予約から来館、成約までの流れがある事業で、数字を見える化するときの準備をまとめたものです。特定の会社の事例ではなく、データを扱う側から見た一般的な設計の考え方で、成約率の目安のような数字は扱いません。
同じ「成約率」でも、数え方で数字が変わる
婚礼の数字は、言葉は同じでも、人によって数え方が違うことがよくあります。先に、次の項目を決めて表にしておきます。
| 決めること |
選び方の例 |
決めないと起きること |
| 来館の単位 |
1組を1件と数える。家族だけの来館をどう扱うか |
担当者によって、人数で数えたり組で数えたりする |
| 2回目以降の来館 |
初回来館だけを来館数に入れ、再来館は別に数える |
再来館が多い月ほど、来館数が多く見える |
| 成約率の分母 |
来館数(初回)とする。予約数を分母にした数字は別の名前にする |
「成約率」が2種類あって、会議で話がかみ合わない |
| 成約の日付 |
申込書を受けた日、内金を受けた日など、1つに決める |
同じ成約が、月をまたいで二重に数えられる |
| 成約の取り消し |
取り消しは成約数から引かず、別の欄に記録する |
過去の月の数字が、後から黙って変わる |
| 媒体の決め方 |
予約を受けた入口で1つ決める。お客様の申告は別の欄に持つ |
媒体ごとの数字の合計が、全体の数と合わない |
| 集計の月 |
来館した月で数えるか、成約した月で数えるか |
来館が多い月と成約が多い月がずれて、効果が読めない |
選び方に正解はありません。大事なのは、決めた内容を書き残し、全員が同じ表を見ることです。途中で定義を変えたときは、変えた日付と理由も同じ表に追記します。そうしないと、去年との比較ができなくなります。
データは3か所に分けて持ち、予約番号でつなぐ
婚礼の数字は、サイトの中で起きることと、会場で起きることにまたがっています。1つの仕組みで全部を持とうとせず、それぞれに向いた場所に置きます。
| 場所 |
持つもの |
持たないもの |
| アクセス解析(GA4) |
ページの閲覧、フェア予約の完了、流入元(媒体) |
名前、メールアドレス、電話番号 |
| 予約の記録 |
予約番号、予約日時、フェアの種類、来館予定日、予約を受けた入口 |
商談の中身 |
| 商談・成約の記録 |
予約番号、来館の有無、来館日、成約の有無と日付、取り消し |
サイト上の閲覧履歴 |
3か所をつなぐのは、予約のときに発行する予約番号です。予約の記録と商談の記録は予約番号で結び、媒体ごとの来館数や成約数を出します。GA4の側は、媒体ごとの予約完了数を見る場所として使い、個人の行動を追う場所にはしません。
サイトの計測:フェア予約の完了をキーイベントにする
GA4では、事業にとって重要な行動を「キーイベント」として印を付けます。フェア予約の完了を表すイベントをキーイベントにすると、どの流入元から予約が生まれたかを見られます。管理画面の「イベント」で、イベント名の横の印を付けるか、新しくイベントを作るときにキーイベントとして設定します。標準のプロパティでは、キーイベントは30個まで設定できます(出典:GA4 のヘルプ:キーイベント)。
ここで気をつけたいのが、予約完了のページの URL です。予約フォームの作りによっては、完了ページの URL にメールアドレスや電話番号が付いてしまうことがあります。Googleは、個人を特定できる情報をアナリティクスに送ることをポリシーで禁止しており、URL のパスやパラメータに個人情報が含まれないよう確かめることを求めています(出典:アナリティクス ヘルプ:個人を特定できる情報(PII)を送信しないために)。完了ページの URL には、予約番号も含めず、「予約が完了した」ことだけが分かる形にします。
広告や SNS、メールから予約ページへ来る導線には、UTM パラメータで媒体を付けておくと、GA4の流入元と、予約の記録の「予約を受けた入口」をそろえやすくなります。媒体の名前は、GA4と予約の記録で同じ言葉を使うよう、一覧を決めておきます。
utm_source 予約の記録での入口
instagram Instagram
google Google(検索・地図)
line LINE公式アカウント
newsletter メールマガジン
GA4のデータ保持期間と、自社で持つデータ
GA4の探索レポートで使う細かいデータは、標準のプロパティでは「2か月」か「14か月」の保持期間で消えます。標準の集計レポートには影響しませんが、細かく分析したいときに、古い期間のデータが見られないことがあります(出典:アナリティクス ヘルプ:データの保持)。初期値のままにしていないか、管理画面で確かめておきます。
婚礼は、予約から来館、成約までの期間が長くなりやすい事業です。月ごとや年ごとの比較は、GA4ではなく、自社で持っている予約と成約の記録から出すほうが確実です。GA4は「サイトのどこを改善するか」を考えるための道具、予約と成約の記録は「事業の数字」を出すための元データ、と役割を分けておきます。
集計の表を作る手順
定義とデータの置き場所が決まったら、次の順で集計の表を作ります。
- 定義の表を作る。 上の「決めること」の表に、自社の選び方を書き込み、関係者で確かめる
- 予約番号を必ず発行する。 フォーム、電話、ポータルサイト経由のどの予約にも、同じ形の番号を付ける
- 予約を受けた入口を、その場で記録する。 後から思い出して入れると、ばらつきが出る
- 来館と成約の結果を、その日のうちに入れる。 入力の欄は選ぶ形にして、書き方の揺れをなくす
- 月ごとに、決めた式で計算する。 来館率は「初回来館数 ÷ 予約数」、成約率は「成約数 ÷ 初回来館数」のように、式も定義の表に書いておく
- 媒体ごとの合計が、全体の数と合うかを確かめる。 合わないときは、入口が空欄の予約がないかを見る
集計の表は、最初はスプレッドシートで十分です。予約や成約の記録が別々の場所にあって、毎月の転記に時間がかかるようになったら、記録の仕組みをつなぐことを考えます。
個人情報は、使う目的の範囲で扱う
予約や商談の記録には、お客様の名前や連絡先が入ります。集計のために使うのは、予約番号と日付、入口、結果のような項目だけで足ります。集計の表やグラフには個人の情報を出さず、見る人の権限も分けておきます。予約フォームで示している利用目的の範囲で扱えているかも、あわせて確かめておきます。
来館や成約の数字を、手作業の集計ではなく仕組みで出せるようにするには、予約・商談の記録をどう持つかから決める必要があります。データの持ち方と画面・権限の設計から進める方法は、会社サイトの業務システム開発のページで説明しています。
※出典のヘルプは、2026年10月2日に記載を確認しました。GA4の画面や項目名は変わることがあるため、設定の前に見直してください。