フィットネス・健康

企業の健康経営の取り組みを支える社内の仕組み。健診の受診勧奨、運動・歩数の社内イベント、ストレスチェックとの分け方、健康情報の扱い

健康経営の取り組みを社内の仕組みで回すときの設計です。健診の受診勧奨を受診の有無だけで進める方法、歩数イベントの参加と表示、ストレスチェックを別の仕組みに置く理由、健康情報の取扱規程を設定に移す方法まで。

この記事の結論:企業の健康経営を社内の仕組みで支えるときは、扱う情報を「法令で会社が扱う情報」「扱う人を限るべき情報」「本人の同意が要る情報」「任意の取り組みの参加記録」に分けるところから設計します。健診の受診勧奨は受診したかどうかだけで進め、結果の中身は取扱規程で決めた人だけが開けるようにします。歩数や運動の社内イベントは参加を任意にし、個人の数字を評価や配置に使わず、表示はチームの合計と本人の画面にとどめます。ストレスチェックは別の仕組みに置き、本人の同意なく結果が会社側に流れない作りにします。健康情報の取扱規程に書く9つの事項は、システムの役割と設定に1つずつ置き換えます。

読み手は、健康経営の取り組みを始めたい、または広げたい会社の総務・人事の担当者と、社内のシステムを作るエンジニアです。産業医や保健師が行う医学的な判断、健康経営優良法人の認定を取るための申請の書き方、健康施策の効果は扱いません。特定の会社の事例や、参加率のような数字も出てきません。

健康経営の仕組みは、扱う情報を4つに分けるところから始める

健康経営の取り組みを支える社内の仕組みは、最初に扱う情報を4つに分け、それぞれ誰が何に使えるかを決めてから作ります。経済産業省は健康経営を、社員などの健康管理を経営の視点で考えて戦略的に実践することと説明していますが、その土台には、社員が不利益を心配せずに健康の情報を出せる仕組みが要ります。

厚生労働省の「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」は、心身の状態の情報を3つに分けて扱い方を示しています。これに、法令とは関係のない任意の取り組みの記録を足して、4つに分けます。

区分 例(指針から) 仕組みでの扱い
会社が必ず扱う情報 健診を受けたかどうか、高ストレスと判定された人の面接指導の申出の有無、医師から聞いた就業上の意見 担当者が目的の範囲で扱う
扱う人を限るのが適当な情報 法定の項目の健診結果、長時間労働の人への面接指導の結果 取扱規程で決めた人だけが開ける
本人の同意が要る情報 法定外の項目の健診結果、保健指導の結果、健康相談の結果、がん検診の結果 同意の記録がない限り取り込まない
任意の取り組みの参加記録 歩数イベントへの参加、運動の講座の申込 参加は自由にし、評価に使わない

任意の取り組みの記録にも、健康に関わる数字が入ることがあります。この点について、雇用の場面の健康情報を扱う個人情報保護委員会の留意事項は、要配慮個人情報にあたらない健康情報も、要配慮個人情報に準じて扱うことが望ましいとしています。体重や血圧を集めるイベントにするなら、3つ目の区分と同じ扱いにそろえておくと、後で迷いません。

健診の受診勧奨は、受診したかどうかの情報だけで進める

健診の受診勧奨の仕組みは、受診したかどうかと受診の予定日だけを扱い、結果の中身には触れない作りにします。勧奨の担当者が結果を見られる必要はないためです。

労働安全衛生法の第66条は、会社に医師による健康診断を行うことを求め、同じ条の第5項で、労働者にも健診を受けることを求めています。会社が指定する医師以外で受けた場合は、結果を証明する書面を出せばよいとも書かれています。この決まりを、仕組みの側では次のように扱います。

状態 本人への知らせ 担当者の画面
未予約 予約の方法と期限を知らせる 未予約の人の一覧
予約済み 前日に日時と持ち物を知らせる 予約日だけ見える
受診済み 受診の記録が付いたことを知らせる 受診済みの印
別の医療機関で受診 結果を証明する書面の出し方を知らせる 書面の提出の有無
期限を過ぎても未受診 個別の案内を送る 上長に知らせるかを規程で決めておく

上長に未受診を知らせる場合も、知らせるのは「受診がまだである」ことだけにします。受診の勧奨を人事の評価と結びつける作りは避け、勧奨の案内文にも、評価には使わないことを書いておきます。

運動や歩数の社内イベントは、参加を任意にして個人の数字を評価に使わない

歩数や運動の社内イベントは、参加するかどうかを本人が選べるようにし、集めた個人の数字は評価や配置に使わない決まりを、申込の画面に書いておきます。任意の取り組みが実質的に参加しないと困るものになると、健康経営の取り組みそのものへの信頼を損ねます。

イベントの仕組みでは、次の点を決めておきます。

  • 申込は本人が行う。 部署単位で一括して登録しない
  • 歩数の取り込み方を選べるようにする。 スマホのアプリとの連携と、自分で数字を入れる方法の両方を用意する
  • 取り込むのは日ごとの歩数だけにする。 位置情報や、心拍のような他の数字は取り込まない
  • 表示はチームの合計と本人の画面に分ける。 個人の実名での順位は出さない
  • 歩けない事情の人も参加できる形を用意する。 歩数以外の運動や、短い体操の記録でも参加できるようにする
  • 終わったら個人の数字を消す。 集計の結果だけを残し、消す日を申込の画面に書く

チームの合計を出すときは、人数の少ないチームの数字から個人の数字が分かってしまわないかも見ます。少人数のチームはほかのチームとまとめて表示するなど、表示の決まりを先に決めておきます。

ストレスチェックは別の仕組みに置き、健康経営の画面とつなげない

ストレスチェックは、健康経営の取り組みの画面とは別の仕組みとして置き、個人の結果がつながらない作りにします。法律で、結果の扱いがほかの健康の情報とは違う形で決められているためです。

労働安全衛生法の第66条の10は、ストレスチェックを行った医師や保健師などが、本人の同意なしに結果を会社へ渡すことを禁じています。厚生労働省のストレスチェック制度の実施マニュアルは、結果を会社に渡すことへの同意を、ストレスチェックの実施の前や実施のときに取ってはならず、結果を本人に知らせた後に取ることとしています。個人情報保護委員会の留意事項も、会社への提供に同意が得られていない結果を、解雇や昇進、異動に直接の権限を持つ監督的な立場の人に扱わせてはならないと書いています。

仕組みの分け方は、次の表のようにします。

情報 置く場所 健康経営の仕組みとの関係
ストレスチェックの個人の結果 実施者の側の仕組み つなげない
結果を会社に渡すことへの同意 実施者の側の仕組み つなげない
面接指導の申出の有無 会社が扱う情報として記録 担当者だけが見られる
社内の相談窓口の案内 健康経営の仕組み 誰でも見られる
職場ごとの集団の傾向 実施者が集計したものを受け取る 個人が分からない形だけを載せる

健康経営の仕組みの側から、ストレスチェックの受検の画面へのリンクを張ることはできますが、受検したかどうかや結果を健康経営の側で記録しないようにしておきます。

健康情報の取扱規程の9つの事項を、システムの役割と設定に置き換える

健康情報を扱う社内の仕組みは、厚生労働省の指針が取扱規程に定めるべきとしている9つの事項を、システムの機能に1つずつ置き換えて作ります。規程と設定が食い違うと、規程の上では見られないはずの人が画面で見られる状態が生まれます。

取扱規程の事項 システムでの置き換え
扱う目的と扱い方 情報の区分ごとに、使える機能を決める
扱う人と権限、扱う情報の範囲 役割ごとに、区分ごとの閲覧と変更の可否を設定する
目的の通知と本人の同意の取り方 同意の画面と、同意した日時と文面の版の記録
適正な管理の方法 閲覧の記録、書き出しの制限、退職者の権限の停止
開示・訂正・使用停止などの方法 本人からの申出を受ける画面と、対応の記録
第三者への提供の方法 外部へ渡すときの承認と、渡した内容の記録
事業の引継ぎや組織の変更のときの引継ぎ 部署の統合や会社の分割のときに、権限を見直す手順
苦情の処理 健康情報の扱いについての問い合わせ窓口
規程の周知の方法 社員の画面に規程の最新版を常に出す

指針は、規程を衛生委員会などを使って労使で話し合って決めることを求めています。システムの側は、規程の版が変わったら設定の見直しの作業が担当者に届く作りにしておくと、規程と設定のずれを防げます。

健診機関や健康保険組合、外部のアプリとのやりとりの線を決める

健康経営の仕組みで外部とやりとりする相手は、健診機関、健康保険組合、歩数のアプリなどのサービスの3種類に分け、それぞれ何を渡し、何を受け取るかを決めます。相手によって、同意が要るかどうかの扱いが違うためです。

相手 受け取るもの 渡すもの 気をつけること
健診機関 受診の有無と、規程で決めた範囲の結果 受診する人の名簿 結果の受け取り方と、受け取る人を契約で決める
健康保険組合 保健事業の案内 規程で決めた範囲の情報 共同で行う事業か、単独の求めかで同意の要否が変わる
歩数などのアプリ 本人が連携を許した日ごとの歩数 参加者の識別のための番号 連携を本人がいつでも外せるようにする

個人情報保護委員会の留意事項は、健康保険組合などが会社と共同で保健事業を行う場合と、単独で会社に健康情報の提供を求める場合とで、本人の同意の扱いが変わることを書いています。どちらにあたるかは、事業の形で変わるので、健康保険組合と確かめてから仕組みに入れます。

取り組みの報告は、個人が分からない集計の数字だけにする

健康経営の取り組みを社内や社外に報告するときは、個人が分からない集計の数字だけを使います。報告の画面は、個人の記録の画面とは別に作り、報告を作る担当者には集計の数字だけが見える権限にします。

報告に使いやすい数字は、健診の受診の割合、イベントの参加者の数、相談窓口の案内を出した回数のような、取り組みの量を表すものです。健診の結果の分布のような健康の状態を表す数字は、人数の少ない部署で個人が分かってしまうおそれがあるため、部署を分けずに全社でまとめるか、出さない判断をします。

健康経営の一環として社員にジムを使ってもらう場合の、ジムの側から見た企業への報告の作り方はジムの法人会員と利用実績の報告の記事で書きました。

作る順番

健康経営の社内の仕組みは、規程を決めてから画面を作る順で進めます。

  1. 今ある健康の情報の置き場所を書き出す。 紙、表計算のファイル、健診機関のサービスなどを洗い出す
  2. 情報を4つの区分に分ける。 指針の3つの分類と、任意の取り組みの記録に振り分ける
  3. 取扱規程を決める。 衛生委員会などで話し合い、扱う人と範囲を決める
  4. 健診の受診勧奨から作る。 受診の有無だけを扱う画面と、知らせの流れを作る
  5. 任意のイベントを足す。 申込、歩数の取り込み、チームの表示、終了後の削除の順で作る
  6. 報告の画面を作る。 集計の数字だけが見える権限で作る

株式会社bundlyzeでは社内向けの業務システムについて、要件定義から開発、稼働後の保守運用までを一続きで担っています。健診の受診勧奨や社内イベントの仕組みを、取扱規程に合った権限の設定から作りたいときは、システム開発の案内に相談の窓口があります。

出典(2026-10-03 確認)

以下の資料は2026-10-03に開いて中身を確かめ、本文の記述と照合しています。法改正や指針の改正で中身が変わることがあるため、規程を決める前に最新の版を確かめてください。

よくある質問

健康診断の結果を、総務の担当者が全部見られる状態にしてもいいですか?

全員がすべてを見られる作りは避けます。厚生労働省の指針は、受診したかどうかのように会社が必ず扱う情報と、健診の結果の中身のように扱う人を限るのが適当な情報とを分けて示しています。受診勧奨に使うのは受診の有無だけにし、結果の中身は取扱規程で決めた人だけが開ける設定にしておきます。

ストレスチェックの結果を、健康経営の集計に入れてもいいですか?

個人の結果を健康経営の仕組みに取り込む作りにはしません。労働安全衛生法は、ストレスチェックを行った医師などが、本人の同意がないまま結果を会社に渡すことを認めていません。ストレスチェックは別の仕組みに置き、健康経営の側は、取り組みの案内や相談窓口への導線を受け持つ形に分けます。

歩数イベントでランキングを出すのはやめたほうがいいですか?

個人の実名でのランキングは、出さない作りをおすすめします。参加しない人や歩けない事情のある人が気まずくなりやすく、任意の取り組みの意味が薄れるためです。チームの合計や、本人が決めた目標への達成を本人にだけ見せる形にすると、参加の自由を保ったまま盛り上げられます。