この記事の結論:ジムの月会費をクレジットカードの継続決済で受けるとき、作る側が最初に決めるのは「会員の契約がいまどの状態か」の一覧です。有効、支払いの確認中、休会中、退会の予約済み、退会といった状態と、それぞれで請求するか・予約できるかを表にしてから、決済サービスとのつなぎ方を決めます。カード番号は自社のシステムに入れず、入力は決済サービスの画面で受け、自社には決済サービスが発行する識別子と請求の結果だけを残します。そのうえで、決済に失敗したときの再請求と案内の順番、カードの有効期限が切れる前の知らせ方、休会と退会の締め日、日割りの計算式を、規約と画面と請求の3か所で同じになるように決めておきます。
この記事は、ジムやスタジオで月会費の口座振替や店頭払いをカードの自動の引き落としに切り替えたい経営者と、その仕組みを作る開発者に向けて、業務のルールの決め方をまとめました。特定の決済サービスをすすめる記事ではなく、どのサービスを選んでも先に決めておくべきことを、経済産業省の所管する法律、業界のセキュリティガイドライン、消費者庁のガイドラインに沿って書いています。お店の事例や金額の目安は扱いません(出典の一覧は記事の最後)。株式会社bundlyzeでは、フィットネス以外の業種でも使える予約の管理システムを構想から運用まで自社で開発しており、会員の予約と契約をどう持つかは、そうした仕組みづくりで避けて通れない部分です。
月会費の継続決済は、会員の「契約の状態」を決めるところから始める
継続決済の仕組みは、会員一人ひとりの契約が今どの状態にあるかを1か所で持ち、状態ごとに「請求するか」「予約できるか」を決めると、迷わずに作れます。決済サービスの画面の操作から考え始めると、休会や退会の扱いが後回しになり、作り直しが起きます。
| 状態 |
どんな会員か |
月会費の請求 |
予約・入館 |
状態を変えるきっかけ |
| 申込中 |
入会の手続きを始めたが、カードの登録が終わっていない |
しない |
できない |
カードの登録と初回の請求が成功した |
| 有効 |
通常どおり通っている |
する |
できる |
請求の失敗、休会や退会の申出 |
| 支払いの確認中 |
月会費の請求が通らなかった |
再請求を待つ |
お店のルールで決める |
再請求の成功、カードの変更、決めた期限の経過 |
| 休会中 |
決めた期間だけ通うのを止めている |
しない(休会費を取るならその分だけ) |
できない |
休会の終了日が来た |
| 退会の予約済み |
退会を申し出て、最後の月を待っている |
最後の月まで請求する |
最後の日まで、できる |
最終日が過ぎた |
| 退会 |
契約が終わった |
しない |
できない |
再入会の手続き |
ここで決めておきたいのは、状態を変えるのが誰か(会員の操作、スタッフ、決済サービスからの通知)と、その記録を残すことです。スタッフが店頭で休会を受け付けたのに画面に反映されず、翌月も請求が走る、という事故は、状態をだれが持つのかを決めていないと起きます。
カード番号は自社で持たず、決済サービスの画面で入力してもらう
カード番号は自社のサーバーにもデータベースにも入れず、会員には決済サービスが用意する入力画面でカードを登録してもらうのが基本です。自社に残すのは、決済サービスが発行する会員やカードの識別子と、請求が成功したか失敗したかの結果だけにします。
割賦販売法の第35条の16は、カード番号などの漏えいを防ぐための措置を講じる義務を定めていて、その対象には、カード払いで役務を提供する事業者も含まれています。月会費をカードで受けるジムも、ここに当たります。
その実務の指針が、クレジット取引セキュリティ対策協議会(事務局は日本クレジット協会)のクレジットカード・セキュリティガイドラインです。2026年3月に公表された6.1版では、ガイドラインに掲げた対策か同等以上の対策を講じていれば、割賦販売法の求める措置を講じているとみなされる、という位置づけが説明されています。加盟店に求められるカード情報の保護は、カード情報を自社で持たない「非保持化」か、カード業界の国際的なセキュリティ基準であるPCI DSSへの準拠のどちらかです。
非保持化は、自社で保有する機器とネットワークで、カード情報を「保存」「処理」「通過」のいずれも行わないことと定義されています。作る側として気をつけたいのは、「保存していなければよい」ではない点です。
| 作り方 |
カード情報が自社を通るか |
判断 |
| 決済サービスの入力画面へ移る、または決済サービスの入力欄を埋め込み、自社には識別子だけが返る |
通らない形にできる |
非保持化の構成として組みやすい |
| 自社のフォームでカード番号を受け取り、サーバーから決済サービスへ送る |
通る |
保存しなくても「通過」に当たる。避ける |
| 受付のスタッフが、口頭や紙で聞いたカード番号を代わりに入力する |
運用しだいで通る |
ガイドラインの考え方に合うか、決済サービスと先に確かめる |
ただし、非保持化だけで安心はできません。6.1版の本文は、いま起きている漏えいの中心は、非保持化を済ませたEC加盟店がWebサイトの弱点を突かれてカード情報を盗まれるものだとして、カード情報を持つか持たないかにかかわらず、自社のシステムとWebサイトの脆弱性対策を求めています。改訂の説明資料には、2025年の6.0版で、この脆弱性対策に加えて、不正ログインへの対策と、カード決済時の本人認証(EMV 3-Dセキュア)の導入が指針の対策に入ったことも書かれています。会員がマイページでカードを変更できる作りにするなら、そのログインの守り方も一緒に設計します。
決済に失敗したときは、止める前の段取りを決めておく
月会費の請求が通らなかったとき、すぐに会員資格を止めるのも、何もせずに放っておくのも、どちらも避けます。決めておくのは、再請求の回数と間隔、会員への案内の順番、予約や入館をいつから制限するか、の3つです。
請求の失敗は、残高の不足、利用限度額、カードの有効期限切れ、カード会社側の判断など、会員の側でも理由がすぐには分からないことがよくあります。仕組みとしては、次の順番で動かすと、取りこぼしも行き過ぎも防げます。
- 失敗の通知を受け取る。 決済サービスから届く通知(Webhookなど)を受け、契約の状態を「支払いの確認中」に変える
- 会員にカードの更新の入口を送る。 失敗したことと、カードを確かめるか変更する手順だけを伝える。理由をこちらから推測して書かない
- 再請求の予定を決める。 決済サービスに再請求の設定があっても、回数と間隔は自社のルールとして決め、規約に書いた内容と合わせる
- スタッフに知らせる。 次の来館の予定がある会員なら、受付で一声かけられるよう、確認中の一覧に出す
- 期限を過ぎたら、規約どおりに扱う。 予約を止めるのか、退会の扱いにするのかを、規約に書いた順番で処理し、本人に知らせる
あわせて、作る側が守りたいのが「同じ月会費を二重に請求しない」ことです。決済サービスの通知には、受け取りに失敗すると再送される仕組みのものがあります。通知ごとに識別子を記録し、同じ通知を2回処理しない作りにしておくと、二重請求と二重の案内を防げます。
カードの有効期限切れは、切れる前に知らせる
有効期限切れによる請求の失敗は、期限が来る前に分かるので、仕組みで先回りできます。決済サービスから受け取れるカードの有効期限の年月を契約の情報と一緒に持ち、期限の月が近づいた会員に、カードを更新する入口を送ります。
| タイミング |
すること |
| 有効期限の月が近づいた |
カードの更新の入口を送る。新しいカードが届いていれば変更してほしいと伝える |
| 期限の月の請求日の前 |
まだ更新していない会員を、スタッフの確認の一覧に出す |
| 期限が切れて請求が失敗した |
決済失敗の流れ(前の見出し)に乗せる |
決済サービスやカード会社によっては、カードが更新されたときに新しい有効期限が自動で反映される仕組みを持っていることがあります。使えるかどうか、使った場合にこちらへどう通知されるかは、選ぶ決済サービスの資料で確かめ、反映された場合は先回りの案内を送らないようにします。
休会は、請求を止める期間と、戻る日をセットで持つ
休会は「請求しない」だけで作ると、戻る日を誰も管理しない状態が生まれます。休会の申出を受けたら、始まる月、終わる月、休会中の請求の有無を一緒に記録し、終わる月が来たら自動で「有効」に戻して請求を再開します。
先に決めておく項目は次のとおりです。
| 決めること |
決め方の例 |
| 申出の締め日 |
翌月から休会するには、今月の何日までに申し出るか |
| 休会中の請求 |
何も請求しないか、休会費として決まった額を請求するか |
| 休会できる長さ |
1回あたりの上限の月数、延長の可否 |
| 休会中の利用 |
予約と入館をできなくするか、例外を設けるか |
| 戻る日の扱い |
終了月の初日に自動で再開するか、本人の操作を待つか |
| 途中で戻る場合 |
休会の期間中に戻りたいと言われたら、いつから請求を再開するか |
決済サービスの側に請求を一時的に止める機能があったとしても、休会の始まりと終わりは自社の契約の状態に持ち、決済サービスへの指示はそこから出す向きにそろえます。決済サービスの管理画面で直接止めると、予約の仕組みは休会に気づきません。
退会は、申出日と最後の請求月を分けて持ち、解約の方法を申込の画面に書く
退会は、申し出た日と、最後に請求する月を別々に記録します。「今月の何日までに申し出れば今月末で退会」という締め日があるなら、申出日から最後の請求月を計算し、その月が終わるまでは予約できる状態にしておきます。
Webで入会を受け付けるなら、通信販売として、申込の最終確認画面に表示する内容も決まっています。消費者庁の「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」では、サブスクリプションのように定期的に料金を払う契約について、次のような点が示されています。
| ガイドラインで示されていること |
ジムの入会画面に置き換えると |
| 無期限の契約や自動更新のある契約は、その旨をはっきり表示する |
退会を申し出るまで毎月請求が続くことを、最終確認画面に書く |
| 無料や割引の期間の後に通常の料金へ自動で移る場合は、移る時期と金額を表示する |
初月の割引がある場合、翌月から請求される金額と時期を書く |
| 解約の申出に期限がある場合は、その期限も表示する |
退会の締め日を、最終確認画面で読めるようにする |
| 解約の方法を特定の手段に限る、受付の時間帯を限るなどの場合は、最終確認画面でも明確に表示する |
店頭のみ、電話のみといった制限があるなら、リンク先に任せず画面に書く |
| 「いつでも解約可能」と強調しながら実際には条件がある表示は、誤認させるおそれがある |
締め日や最低利用期間があるなら、「いつでも退会できます」とは書かない |
同じガイドラインは、解約方法の制約を表示しても、それで制約が民事上有効になるわけではなく、消費者の権利を不当に制限する条項は消費者契約法などで無効になりうることにも触れています。作る側としては、Webで入会した人がWebで退会を申し出られるようにし、受け付けた日時が記録に残る作りにしておくのが安全です。店頭での契約は通信販売とは別の決まりが関わることがあるので、どの入口で何を表示するかは、規約を作る段階で専門家と確かめます。
日割りは、計算のルールを1つに決めて、画面と請求で同じ式を使う
月の途中で入会した人や、途中で退会・休会する人の扱いは、日割りにするかどうかより、決めたルールを画面と請求の両方で同じ式から出すことのほうが大事です。入会の画面に出た金額と、実際に引き落とされた金額が違うと、それだけで問い合わせになります。
よくある決め方は、次の3つです。
| 入会月の扱い |
計算 |
作る側の注意 |
| 日割りにする |
月会費 × 入会日から月末までの日数 ÷ その月の日数 |
1か月を「その月の日数」で数えるか、決まった日数で数えるか、1円未満を切り捨てるか切り上げるかを決める |
| 入会月は請求せず、翌月から満額 |
入会月は0、翌月から月会費 |
月末に入会した人と月初に入会した人で差が出ることを、お店として受け入れるか |
| 入会月から満額 |
入会月も月会費 |
月の後半の入会を、翌月の入会扱いにするかどうかを決める |
プランの変更(回数の多いプランへの切り替えなど)を月の途中で受けると、日割りの計算が二重になり、間違いが起きやすくなります。変更は翌月から適用にする、と決めてしまうほうが、作りも説明も単純になります。
計算の式は、プログラムの中に1か所だけ置き、入会の確認画面の表示と、決済サービスへの請求金額の指示の両方がそこを呼ぶようにします。式を変えるときに片方だけ直す、という事故を防ぐためです。
作り始める前の確認表で、空欄をなくす
開発を始める前に埋めておきたい項目は、次の表のとおりです。空欄が残っている行は、作る途中で必ず止まる場所です。
| 項目 |
決めること |
書く場所 |
| 契約の状態 |
状態の一覧、状態ごとの請求と予約、変えるのは誰か |
仕様書 |
| カード情報 |
入力を受ける画面、自社に残す項目、店頭での扱い |
仕様書、決済サービスとの確認記録 |
| 決済の失敗 |
再請求の回数と間隔、案内の文面、制限を始める時期 |
規約、仕様書 |
| 有効期限 |
案内を送る時期、自動更新の仕組みを使うか |
仕様書 |
| 休会 |
締め日、休会中の請求、上限、戻る日 |
規約、入会の画面 |
| 退会 |
締め日、最後の請求月、受け付ける方法 |
規約、最終確認画面 |
| 日割り |
計算式、端数の扱い、プラン変更の適用月 |
規約、入会の画面、仕様書 |
月会費の決済は、予約の仕組みや会員の情報と切り離せません。会員の状態と予約をまとめて設計したいときの相談先として、bundlyzeの会社サイトにシステム開発の案内ページがあります。
出典と確認日
下の資料は、どれも確認日を2026年10月2日としています。法令もガイドラインも版が改まるので、作り始める日に最新のものを開き直してください。