フィットネス

ジムの問い合わせの一次対応をAIに任せるとき、答えさせる範囲と人に回す線の引き方

ジムやスタジオの問い合わせにAIで自動応答するとき、アクセスや持ち物はAIに、空き枠や料金は予約データから、けがや持病・退会の相談はスタッフへ。答える範囲と人に回す条件を、作る側の目線で設計に落とします。

この記事の結論:ジムの問い合わせをAIに一次対応させるときは、質問を「変わらない情報」「日々変わる情報」「体と健康の相談」「契約・お金・苦情」の4つに分け、AIが自分の言葉で答えるのは1つ目だけにします。空き枠や料金のように日々変わる情報は、AIに文章を作らせず、予約データや料金表をそのまま見せます。けがや持病、退会や返金の相談は、AIが判断せずスタッフに回します。人に回す条件と、引き継ぐときに渡す情報を先に決めておくと、AIの返事が外れたときの被害が小さくなります。

株式会社bundlyzeでは、問い合わせや日々の作業の流れにAIを組み込む仕組みづくりを手がけ、LINE公式アカウントにつなぐ仕組みも自社で開発しています。この記事では、ジムやスタジオに届く問い合わせを例に、AIに答えさせてよい範囲と、人に回す線をどう設計に落とすかを、作る側の目線でまとめます。どこかのお店の話ではなく、一般的な設計の組み立て方として読んでください。

ジムに届く質問を、4つの箱に分ける

まず、実際に届いている問い合わせを書き出して、次の4つに分けます。

箱 質問の例 AIの扱い 答えの元
変わらない情報 駐車場はあるか、持ち物、シャワーの有無、最寄り駅からの道 AIが答える 店が書いた案内の文書
日々変わる情報 今日の空き、体験の枠、料金、休館日 AIは文章を作らず、データを見せる 予約データ、料金表、営業時間
体と健康の相談 膝が痛いが通えるか、持病がある、妊娠中、食事の指導 スタッフに回す ―
契約・お金・苦情 休会・退会、返金、トレーナーへの不満 スタッフに回す ―

ポイントは、AIに「自分の言葉で答えさせる」のを1つ目の箱に限ることです。2つ目の箱は、AIが答えを作ると、古い料金や埋まった枠を案内してしまうおそれがあります。3つ目と4つ目は、答えを間違えたときに、体やお金、信頼に直接響く相談です。

変わらない情報は、AIが「店の文書」だけを見て答える

1つ目の箱でも、AIがもともと持っている知識で答えさせることはしません。駐車場や持ち物の答えは、店ごとに違うからです。

作る側としては、次の3つを決めます。

  1. 答えの元になる文書を1つにする。 アクセス、設備、持ち物、体験の流れを、店が書いた文書にまとめる。AIはこの文書を読んで答える
  2. 文書にないことは答えない、と指示する。 文書に答えがなければ「スタッフに確認します」と返す。推測で埋めさせない
  3. 文書の持ち主と更新日を決める。 設備や時間割が変わったら、誰が文書を直すか。直していない文書をAIが読み続けるのがいちばん危ない

AWS のAI関連の認定(AI Practitioner など)でも、生成AIの答えを、決めた資料に基づかせる考え方が扱われています。ジムの問い合わせ対応でも、まず「何を元に答えるか」を決めるところから始めます。

日々変わる情報は、AIに文章を作らせない

空き枠や料金を聞かれたとき、AIにそれらしい文章を作らせるのは避けます。代わりに、次のように役割を分けます。

  • AIの役割: 「空き枠を知りたい」という質問の意図を読み取るところまで
  • 仕組みの役割: 予約データから空き枠を取り出し、決まった形で表示する。料金なら、店が管理している料金表のページを開く

こうしておくと、料金を改定したときも、料金表を直すだけで返事が変わります。AIの指示文や文書をあちこち直す必要がありません。

キャンペーンの適用や、「もう少し安くならないか」という相談は、条件によって答えが変わります。これは4つ目の箱と同じ扱いにして、スタッフに回します。

人に回す条件を、先に書いておく

AIの返事を止めてスタッフに回す条件は、「なんとなく難しそうなら」ではなく、仕組みが判断できる形で書いておきます。

条件 例 回したあとに返す言葉
3つ目・4つ目の箱と判断した 痛み、病気、薬、退会、返金、不満 スタッフから返事をすることと、返事の目安
答えの元の文書に答えがない 文書に書かれていない設備のこと 確認してから返事をすること
同じ質問がくり返された 返事に納得していないとき スタッフに代わること
利用者が人を求めた 「スタッフと話したい」 すぐに引き継ぐこと

営業時間外に人に回るときは、「受け付けた」ことと「いつごろ返事が届くか」を必ず伝えます。返事を待っている間に、ほかのジムへ申し込まれてしまうのを防ぐためです。

スタッフに引き継ぐときに渡すもの

人に回したあとに、スタッフが最初から聞き直すと、利用者には二度手間になります。引き継ぐときは、次の情報をまとめて渡します。

  • 会話の要約(AIが作り、元の会話もたどれるようにする)
  • どの箱と判断したか、どの条件で回したか
  • 会員か、体験前か(予約データとひも付いていれば分かる)
  • 返事に使える連絡先

LINEで受けている場合は、LINEのユーザーIDで予約データとひも付けておくと、会員かどうかや次の予約が、スタッフの画面でそのまま分かります。

健康に関わる内容と、AIサービスの設定

ジムの問い合わせには、けがや持病の話がどうしても入ってきます。病歴は、法律で特に慎重な扱いが求められる「要配慮個人情報」にあたり、あらかじめ本人の同意を得ずに取得することは原則としてできません(出典:個人情報保護委員会が公表している通則編のガイドライン)。

また、個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の範囲内かを十分に確かめること、入力した情報が返事を作る以外の目的、たとえば学習に使われないかを確かめることを呼びかけています(出典:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について(個人情報保護委員会))。

設計としては、次の3点を入れておきます。

  1. 最初の案内で、健康の相談はスタッフが受けると伝える。 詳しい症状を、AIとのやり取りに書かなくて済むようにする
  2. 健康の話と分かったら、AIの返事を止めてスタッフに回す。 AIに「大丈夫です」「やめておきましょう」と判断させない
  3. 使うAIサービスの設定を確かめる。 入力が学習に使われない設定か、どのくらいの期間保存されるかを、契約の条件で確かめる

AIが返事をしていることを、利用者に分かるようにする

総務省と経済産業省が公表している「AI事業者ガイドライン」では、AIを使う側にも、透明性や安全性への配慮が求められています(出典:AI事業者ガイドライン(経済産業省のページ))。

ジムの問い合わせなら、最初のあいさつで「AIが自動でお答えします。体調や契約のご相談はスタッフにおつなぎします」と伝えておくのが分かりやすい形です。利用者が、どこまでをAIに聞いてよいか、自分で判断できます。

公開の前と後に、確かめること

公開の前に、4つの箱それぞれについて、想定の質問を用意して試します。とくに、箱の境目にある質問を入れておきます。

  • 「膝が少し痛いけど、体験に行っても大丈夫?」(健康の相談として回るか)
  • 「今日の夜、空いてる?」(予約データから答えるか)
  • 「友だちと一緒だと安くなる?」(キャンペーンの相談として回るか)
  • 「駐車場、何台ある?」(文書に書いていなければ、推測で答えていないか)

公開した後は、人に回した会話を定期的に読み返します。回す必要のなかった質問は文書に答えを足し、回すべきだったのにAIが答えていた質問は、条件を見直します。ジムの時間割や料金が変わる時期は、この見直しを合わせて行うと、文書が古いまま残りにくくなります。

問い合わせ対応へのAIの組み込みを考えるなら

ジムの問い合わせ対応では、AIの賢さよりも、答えの元と人に回す線を決めることのほうが、仕上がりを左右します。予約データやLINEとのつなぎ込みまで含めて、問い合わせの流れにAIを組み込む進め方は、会社サイトのAI導入支援・業務効率化のご案内に載せています。

※この記事の出典はすべて2026年10月2日に確認しました。法律の解釈が必要な場面では、最新のガイドラインや専門家の意見を確かめてください。

よくある質問

料金の質問も、AIに答えさせて大丈夫ですか?

AIに金額の文章を作らせるのではなく、店が管理している料金表をそのまま見せる形にします。キャンペーンの適用や割引の相談のように、条件で答えが変わるものはスタッフに回します。

AIが答えられなかった質問は、どうなりますか?

「スタッフから返事をします」と伝え、いつごろ返事が届くかも添えて引き継ぎます。会話の要約と質問の種類をスタッフ側に渡しておくと、同じことを聞き直さずに済みます。

けがの相談をAIに入力されてしまったら?

健康に関わる内容と分かった時点でAIの返事を止め、スタッフに回します。あわせて、使っているAIサービスで入力内容が学習に使われない設定か、どのくらいの期間保存されるかを確かめておきます。