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婚礼プランナーの業務にAIを入れるとき、任せる作業と、顧客情報を入れない線の引き方

ウェディングプランナーの業務に生成AIを取り入れるとき、打ち合わせ記録の整理や見積もり項目の説明文、進行表の下書きなど、任せる作業と、新郎新婦やゲストの情報を渡さない線を、業務の場面ごとに表にしてまとめます。

この記事の結論:婚礼プランナーの業務に生成 AI を入れるなら、任せるのは「文章の形を整える作業」に絞り、新郎新婦やゲストを特定できる情報は入れない、という線を業務の場面ごとに決めます。打ち合わせ記録の整理、見積もり項目の説明文、進行表のたたき台、問い合わせへの返信の下書きは、名前を記号に置き換えれば AI に任せやすい作業です。アレルギーや体調、家族の事情、契約の金額と名前の組み合わせは、置き換えても入れません。個人の情報を入れる必要がある場合は、個人情報保護委員会の注意喚起に沿って、利用目的の範囲内か、サービスの提供者がその情報を学習に使わないかを先に確かめます。

プランナーの業務に AI を入れるとき、どこまで任せて、何を渡さないかは、どう決めればよいでしょうか。株式会社bundlyzeでは、ふだん業務システムの要件定義から保守運用までと、AWS 上のデータ分析基盤づくりを手がけています。業務のデータの置き場所と見せる範囲を設計する側の目線で、ウェディングプランナーの業務での線引きを場面ごとに整理しました。特定の会社や式場の話ではありません。根拠は、個人情報保護委員会と総務省・経済産業省の資料、AI サービスの公式の説明です。

プランナーの仕事で、AIが手伝いやすい場面

プランナーの仕事には、同じ形の文章を相手ごとに作り直す作業が多くあります。AI が手伝いやすいのはそこです。一方で、その文章の材料には、お二人やゲストの個人的な情報がほぼ必ず含まれます。場面ごとに、任せる作業と、渡すもの・渡さないものを分けておきます。

業務の場面 AIに任せる作業 渡してよいもの 渡さないもの
打ち合わせ記録の整理 走り書きのメモを、決まったこと・宿題・次回までに確かめることに分ける 名前を「新郎A」「ゲストB」のような記号に置き換えたメモ 氏名、連絡先、住所、家族の事情
見積もり項目の説明文 料理や衣装、装花の項目を、初めての人に分かる言葉で説明する文にする 項目の名前と、公開している内容の説明 お二人の名前と金額の組み合わせ
進行表のたたき台 披露宴の一般的な流れから、時間の割り振りの案を作る 式の形式、会場の使える時間、演出の種類 余興をする人の名前、スピーチの中身
席次の考え方 卓の数と区分ごとの人数から、並べ方の案を出す 「親族」「友人」「職場」といった区分と人数 ゲストの名前、間柄の事情
問い合わせへの返信の下書き 問い合わせの種類に合わせた返信の文の型を作る 問い合わせの種類と、サイトに出している情報 問い合わせた人の名前、連絡先、相談の中身そのもの
アレルギーや体調の確認 任せない なし すべて

表の右端の列を、最初に決めておくのがこの記事の要点です。左の作業が増えても、右の列が守られていれば、AI を使う範囲を広げても困りません。

入れない情報を、種類で決める

場面ごとの表だけでは、新しい使い方が出てきたときに迷います。入れない情報を、種類でも決めておきます。

区分 婚礼での例 扱い
人を特定できる情報 新郎新婦・ゲストの氏名、電話番号、メールアドレス、住所、写真 入れない。必要なら記号に置き換える
健康や体に関わる情報 食物アレルギー、妊娠、持病、車いすや介助の要否 入れない。置き換えても入れない
家族や間柄の事情 親族との関係、再婚、故人への配慮、招かない人 入れない。置き換えても入れない
契約とお金 見積もりや契約の金額と名前の組み合わせ、支払いの状況 入れない
公開している情報 プランの名前、会場の説明、一般的な式の流れ 入れてよい

健康や体に関わる情報のうち病歴などは、法律上の「要配慮個人情報」にあたり、手に入れるときや外部に渡すときに本人の同意が要るなど、他の個人情報より慎重な扱いが求められます(個人情報保護委員会が示す、法律の通則編のガイドライン)。どの情報が要配慮個人情報に当たるかを現場で判断させるより、「健康や体に関わることは、AI には入れない」と一律に決めるほうが運用は簡単です。

家族や間柄の事情は、法律上の区分とは別に、漏れたときにお二人との信頼をいちばん損なう情報です。名前を消しても、挙式日や会場と組み合わせると誰の話か分かることがあるので、置き換えても入れない区分にしています。

個人の情報を入れるなら、先に確かめる2つのこと

それでも、業務によっては個人の情報を含めて AI を使いたい場面が出てきます。個人情報保護委員会は、生成 AI サービスについての注意喚起で、事業者に対して次の点を挙げています(個人情報保護委員会:生成 AI サービスを使うときの注意喚起、2023年6月2日)。

  1. 個人情報を含む指示(プロンプト)を入力する場合は、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確かめること
  2. 本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、そのデータが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、法律に違反するおそれがあるため、サービスの提供者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確かめること

1つ目は、お二人から情報を受け取ったときに伝えている利用目的の範囲に、AI での処理が収まっているか、という確認です。2つ目は、使うサービスのデータの扱いの確認です。一例を挙げると、Microsoft の公式の説明では、組織向けの Copilot で入力したプロンプトや返ってきた応答、Microsoft Graph を通じて参照するデータは、土台の大規模言語モデルの学習には使わないとされています(Microsoft の説明:Copilot のデータとプライバシー)。同じ会社のサービスでも、個人向けと法人向けで扱いが違うことがあるので、実際に使う契約の種類で確かめます。

国のガイドラインも、AI を作る側だけを見ているわけではありません。総務省・経済産業省がまとめた AI事業者ガイドラインは、2026年3月31日に第1.2版が出ており、業務で AI を使う事業者も「AI利用者」として対象に含めています(総務省の掲載ページ)。プランナーの業務で AI を使う会社も、この利用者の立場にあたります。

置き換えて入れ、本物に戻すのは人

名前を記号に置き換えて使う場合の流れは、次のとおりです。

  1. 打ち合わせのメモから、名前・日付・会場名など人を特定できる部分を記号に置き換える
  2. 置き換えたメモを AI に渡し、決まったことと宿題に分けてもらう
  3. 出てきた文を読み、事実と違う所や抜けている所を直す
  4. 記号を本物の名前に戻す作業は、社内の顧客の記録の上で行う
  5. 記号と本物の名前の対応は、AI に渡さない

AI への指示は、たとえば次のような形です。

打ち合わせメモを整理するときの指示の例
次の打ち合わせメモを、「決まったこと」「お二人の宿題」「プランナーの宿題」「次回までに確かめること」の4つに分けて、箇条書きにしてください。
メモにない内容は足さないでください。
人の名前は「新郎A」「新婦B」「ゲストC」のような記号のまま残してください。

(ここに、名前を置き換えたメモを貼る)

「メモにない内容は足さない」と書くのは、AI が気を利かせて、話していない決定事項を作ってしまうのを防ぐためです。

AIの文を、そのままお二人に出さない

AI が作った文には、事実と違うことが混ざることがあります。Microsoft のドキュメントでも、生成 AI の応答が100%事実である保証はなく、他の人に送る前に人が判断して確かめる必要があるとされています。婚礼では、次のような文は、必ずプランナーが読んでから出します。

  • 見積もりや料金に関わる説明
  • 日程、時間、会場の空き状況に関わる内容
  • 問い合わせへの返信(特に、お断りや変更の連絡)

料金や空き状況は日によって変わります。こうした値は AI に書かせず、予約や見積もりのシステムから取り出した数字を文に差し込む形にしておくと、取り違えが起きません。

線引きを1枚にして、チームで同じものを見る

ここまでの2つの表(場面ごと・種類ごと)と、確かめた AI サービスの名前・契約の種類を1枚にまとめ、プランナー全員が同じものを見られるようにしておきます。新しい使い方を思いついたら、まずこの1枚の右端の列に照らして、渡すものに問題がないかを確かめます。

記号への置き換えや閲覧の権限をシステムの側に持たせ、顧客の情報を AI に渡さないまま業務に組み込みたいときは、AI導入支援・業務効率化のページ(会社サイト)に進め方を書いています。

※個人情報保護委員会・総務省・Microsoft の各ページ:確認日 2026-10-02。AI サービスのデータの扱いは、契約の種類や改定の時期によって変わります。導入を決める前に、その時点の公式の説明を読み直してください。

よくある質問

席次表づくりにAIを使ってもいいですか?

ゲストの名前を入れずに、卓の数や、親族・友人・職場といった区分と人数だけを渡して、並べ方の考え方を出してもらう使い方なら、顧客の情報を渡さずに済みます。実際の名前を当てはめる作業は、社内の席次表の上で人が行います。

名前を消した打ち合わせメモなら、個人向けの無料のAIに入れても大丈夫ですか?

名前を消しても、挙式日、会場、家族の事情のような組み合わせから、誰の話か分かることがあります。会社として使ってよいAIサービスを決め、入力した内容が学習に使われるかどうかを、サービスの公式のデータの取り扱いで確かめてから使います。

ゲストのアレルギーの一覧を、AIで見やすく整えたいのですが。

アレルギーは健康に関わる情報で、取り違えると事故につながります。AIには渡さず、決まった様式とシステムで管理し、厨房に渡す前に人が確かめる流れにしておきます。