この記事の結論:来館予約から成約までの追客メールや LINE は、何を送るかより先に「その人に送ってよいか」「止めたい人をすぐ止められるか」を設計します。メールで広告や宣伝を送るなら、特定電子メール法により、原則としてあらかじめ同意した人にだけ送り、送信者の名前と配信停止の方法を表示し、停止の申し出があれば以後は送らず、同意の記録を保存します。そのうえで、予約の確認のような「取引の連絡」と、フェアや特典の「案内」を別の種類として持ち、来館前・検討中・検討終了・成約後の段階ごとに、送る条件と止める条件を決めます。LINE はブロックされると届かないので、ブロックの通知を記録に反映し、メールと LINE のどちらかで止めた人に、もう片方から案内が届かない持ち方にしておきます。
この記事で扱うのは、式場やフォトウェディングなど、来館の予約から成約までに時間がかかる婚礼の事業で、追客の配信を組むときの設計の考え方です。取り上げる場面はどれも一般的なもので、特定の会社で起きたことではありません。根拠には、総務省・消費者庁の資料と LINE の公式ドキュメントを使っています。法律の解釈が必要な判断は、弁護士などの専門家に確かめてください。
婚礼の追客で起きやすいのは「止まらない配信」
婚礼の検討は、来館予約から成約まで長く続き、途中で他の会場に決める人もいます。配信を設計しないまま始めると、送りすぎよりも、止めるべき人に届き続けることのほうが問題になります。
| 起きること |
原因 |
| 他の会場に決めたと伝えた人に、フェアの案内が届き続ける |
「検討をやめた」という状態を持っていない |
| メールで配信を止めた人に、LINE で同じ案内が届く |
停止の状態を、メールと LINE で別々に持っている |
| 成約したお二人に、新規向けのフェア案内が届く |
成約したことが、配信の対象の絞り込みに反映されていない |
| 案内を止めた人に、予約の確認まで届かなくなった |
取引の連絡と案内を、同じ配信リストで扱っている |
| お二人のうち1人が止めたのに、もう1人にも届かなくなった(またはその逆) |
同意と停止を、組ではなく個人ごとに持っていない |
どれも、送る内容ではなく、データの持ち方で防げることです。
メールの広告宣伝に、法律が求めていること
フェアの案内や特典の告知のように、広告や宣伝を目的としたメールは、特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)の対象になります。携帯電話番号で送るショートメッセージ(SMS)も対象に含まれます。総務省のパンフレットに沿って、設計に落とすと次のようになります。
| 法律が求めること |
内容 |
設計に落とすと |
| オプトイン |
原則として、あらかじめ同意した人にだけ送れる |
予約フォームに、案内の受け取りについての同意欄を置く |
| 同意の記録の保存 |
同意を受けたときの状況(時期と方法など)を記録する。保存期間は、その人に最後に送った日から1か月(措置命令を受けた場合は1年) |
アドレスごとに、同意の日時、経路、そのとき表示した文面を残す |
| 表示の義務 |
送信者の氏名または名称、受信拒否ができる旨とその通知先(メールアドレスまたは URL)、送信者の住所、苦情や問い合わせの連絡先(住所と連絡先はリンク先でもよい) |
案内のテンプレートの末尾に、固定で差し込む |
| 受信拒否 |
同意した人でも、受信拒否の通知を受けたら以後は送れない |
停止の手続きを受けたら、その時点から案内の対象から外す。停止の記録も残す |
出典:総務省:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント(パンフレット)、総務省:迷惑メール対策
同意なしに送れる例外(取引関係にある人など)も定められていますが、フェアに予約しただけの人がそれに当たるかを、配信のたびに判断するのは現実的ではありません。作る側としては、フォームで同意を取り、記録の残っている人にだけ案内を送る、という単純な形にそろえるほうが運用が安定すると考えています。
同意欄は、最初からチェックが入った状態にしないことをおすすめします。予約の操作のついでに気づかないまま同意した人が増えると、停止の申し出や迷惑メールの報告が増え、取引の連絡まで届きにくくなるおそれがあるからです。
取引の連絡と案内を、別の種類として持つ
配信の仕組みでは、送るメッセージを最初から2種類に分けておきます。
| 種類 |
例 |
同意 |
配信停止で止まるか |
| 取引の連絡 |
来館予約の受付、日時の変更、来館前日の場所と持ち物の案内、打ち合わせの日程 |
広告宣伝ではないので、同意の欄とは別に扱う |
止まらない |
| 案内(広告宣伝) |
次のフェア、季節の特典、別のプランの紹介 |
同意した人だけ |
止まる |
パンフレットでは、契約や取引の履行を知らせるメールに、付随的に広告宣伝が入っている場合の扱いも例外として示されています。それでも、取引の連絡にフェアの告知を足していくと、どこからが案内なのかが曖昧になります。テンプレートの側に「取引」「案内」の種類を持たせ、取引のテンプレートには案内の文面を入れない、という決まりにしておくと、配信を止めた人にも予約の連絡だけは確実に届きます。
段階ごとに、送る条件と止める条件を決める
追客の配信は、顧客の段階ごとに表にしておきます。表に「止める条件」の列があることが大事です。
| 段階 |
送るもの |
止める条件 |
| 来館予約から来館まで |
取引の連絡(受付、前日の案内) |
予約の取り消し |
| 来館後・検討中 |
同意した人に、見積もりの補足や次のフェアの案内 |
配信停止の申し出、検討をやめたという連絡、成約 |
| 検討をやめた |
送らない |
(送らない状態のまま。再び問い合わせがあれば最初の段階に戻す) |
| 成約後 |
打ち合わせの日程など、取引の連絡 |
新規向けの案内からは外す |
婚礼ならではの点は、検討しているのが2人だということです。2人それぞれのメールアドレスや LINE のアカウントを受け取る場合、同意と停止は、組ではなく連絡先ごとに持ちます。パンフレットでも、同意の記録は個別のメールアドレスごとの状況を示すものとされています。1人が停止したからといって、もう1人の同意まで消したり、逆に1人の同意でもう1人に送ったりしないようにします。
LINEで届くかどうかは、友だち追加とブロック次第
株式会社bundlyzeでは、ステップ配信のような LINE 公式アカウントの連携の仕組みを、自社で開発しています。公式アカウントから送るメッセージは、友だちになっている人に届き、ブロックされると届かなくなります。その仕組みを作るうえで押さえておきたいのは、次の2点です。
- ブロックは、送信の結果では分からない:ブロックしているユーザーを宛先にして送っても、エラーにはならずステータスコード 200 が返り、メッセージは届きません。届かなかったメッセージは、通数には数えられません(LINE の開発者向け FAQ)
- ブロックとブロック解除は、Webhook で届く:友だち追加またはブロック解除のときは「フォローイベント」、ブロックされたときは「フォロー解除イベント」が届きます(LINE の開発者向けドキュメント:Webhook の受信)
つまり、フォロー解除イベントを受け取って顧客の記録に反映する処理がないと、システムは「LINE で送った」と思い込んだままになります。来館前日の案内を LINE だけで送る設計にしていると、ブロックした人には何も届きません。取引の連絡は、LINE が届かない状態の人にはメールで送る、という切り替えも、この記録があってはじめてできます。
メールとLINEの二重送信を防ぐデータの持ち方
最後に、配信の状態をどう持つかです。配信リストを書き出したファイルで管理するのではなく、顧客の記録と同じ場所に、連絡先ごとの状態として持ちます。
| 持つ項目 |
例 |
| 連絡先 |
メールアドレス、または LINE のユーザーID |
| 案内への同意 |
同意の日時、取得の経路(予約フォームなど)、そのとき表示した文面の版 |
| 停止 |
停止の日時と経路(メールの停止リンク、LINE のブロック、電話での申し出) |
| 届くかどうか |
メールの配信エラー、LINE のフォロー状態 |
| 最後に案内を送った日 |
同意の記録を保存する期間を数える起点 |
運用のルールは2つです。1つ目は、案内を送る直前に、その都度この状態を読むこと。数日前に作った送り先の一覧を使うと、その間に止めた人に届きます。2つ目は、メールと LINE のどちらかで止めた人には、もう片方からも案内を送らないこと。法律の上でメールと LINE が同じ扱いかどうかとは別に、受け取る人にとっては「止めたのに届いた」ことに変わりがないからです。
同意と停止の状態を顧客の記録と一緒に持ち、メールと LINE の送り分けまで仕組みに組み込みたい場合の相談先として、会社サイトに業務システム開発の説明を置いています。
※総務省のパンフレットとページ、LINE の開発者向けの資料:確認日 2026-10-02。法令の運用や LINE の仕様は改定されることがあるため、配信の仕組みを設計する段階で、改めて最新の資料に当たってください。