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社内のファイル共有をNAS・ファイルサーバーからクラウドストレージへ移す手順。フォルダと権限の棚卸し、移行ツールの選び方、切り替え日の決め方

NASやファイルサーバー上の共有フォルダを、SharePointやGoogle ドライブの共有ドライブへ移す手順です。移行先の決め方、フォルダと権限の棚卸し、ファイル名とパスの直し方、移行ツールの選び方、差分の移行と切り替え日の段取りまで。

この記事の結論:社内のファイル共有をNASやファイルサーバーからクラウドストレージへ移すときは、①移行先(SharePointかGoogle ドライブの共有ドライブか)を決め、②フォルダの件数・容量・最終更新日・持ち主と、③フォルダごとの権限を一覧にし、④移行先で使えないファイル名と長すぎるパスを直してから、⑤移行ツールで大半を先に移します。切り替えの日は旧共有を読み取り専用にし、その後に変わった分だけを移して、社員の作業場所を一斉に切り替えます。旧共有はすぐ消さず、読み取り専用のまましばらく残します。

社内のIT担当や、総務の仕事と兼ねてNASの面倒を見ている方を読み手に想定しました。データベースを持つ業務アプリケーションをクラウドへ移す段取りは「業務システムのクラウド移行の段取り」にまとめたので、ここでは社員が日々開くファイルと共有フォルダの引っ越しだけを扱います。移行先の製品の料金や、どちらが優れているかの評価は書きません。

株式会社bundlyzeではクラウド(AWS)上でのデータ分析基盤づくりと、業務システムを要件の定義から保守・運用まで一貫して受託する仕事をしており、社内のデータの置き場所を整える立場からこの手順をまとめました。

NASからクラウドストレージへの移行は、7つの段階に分けて進める

NASやファイルサーバーからクラウドストレージへの移行は、移行先を決める段階から旧環境を片付ける段階まで、7つに分けて進めます。いきなりコピーを始めると、権限や名前の問題が移行の途中で見つかり、やり直しになります。

段階 やること 終わったと言える状態
1. 移行先を決める SharePointか共有ドライブか、どの単位で分けるか 移行先の一覧(サイトや共有ドライブの名前と、使う部署)
2. フォルダの棚卸し 件数・容量・最終更新日・持ち主を一覧にする 各フォルダを「移す・保管に回す・捨てる候補」に分けた表
3. 権限の棚卸し 誰がどのフォルダに何をできるかを一覧にする 移行先のグループと権限の対応表
4. 名前とパスを直す 使えない文字、長すぎるパス、予約された名前 移行ツールの事前スキャンで問題が出ない
5. 試しの移行 1つの部署の分だけ移し、社員に使ってもらう 手順書と、かかった時間の記録
6. 本移行と切り替え 大半を先に移し、切り替えの日に差分を移す 社員が新しい場所で仕事を始めている
7. 旧環境の片付け 読み取り専用で一定期間残し、その後止める 旧環境のバックアップの保管と、機器の停止

移行先は、社員が毎日使っているメールと表計算の環境から決める

移行先は、社員が毎日使っているメールと表計算の環境に合わせて決めます。社内でMicrosoft 365を使っていればSharePoint(Teamsのファイルも中身はSharePoint)、Google Workspaceを使っていればGoogle ドライブの共有ドライブにすると、権限を付けるグループやファイルを開くアプリが1つにまとまります。

そのうえで、移行先には1か所に入れられる量の上限があるため、NASの共有を1つの場所にまとめて移すのではなく、部署や用途ごとに分けて作ります。移行の計画に関わる上限を、公式の資料から抜き出しました。

項目 SharePoint(Microsoft 365) Google ドライブの共有ドライブ
1か所に入れられる件数 1つのライブラリに3,000万のファイルとフォルダ 1つの共有ドライブに50万アイテム(ゴミ箱の中も含む)
1ファイルの大きさ アップロードは250GBまで 5TBまで
パスの深さ・長さ デコード後のパス全体(ファイル名を含む)が400文字まで フォルダの入れ子は100階層まで
権限の付け方の制約 10万件を超えるアイテムを持つフォルダなどは権限の継承を切れない メンバーは合計600まで(グループは100まで)
同期の目安 1つのライブラリで同期するのは30万ファイル以下を推奨 1ユーザーが24時間にアップロード・コピーできるのは750GBまで

この表から言えるのは、件数の多い部署の共有を1つにまとめない、深い階層を持ち込まない、社員のパソコンに全部を同期させない、の3点です。上限は変わることがあるため、計画を固める前に出典のページで現行の値を確かめてください。

フォルダの棚卸しは、件数・容量・最終更新日・持ち主の4列で一覧にする

フォルダの棚卸しでは、共有の第2階層くらいまでのフォルダごとに、ファイルの件数、容量、中のファイルの最終更新日、持ち主(中身を判断できる人)の4つを一覧にします。この一覧があると、移すもの・保管に回すもの・捨てる候補を、持ち主と相談しながら決められます。

Windowsのファイルサーバー、またはWindowsからアクセスできるNASであれば、PowerShellで一覧を作れます。次の例は、共有の直下のフォルダごとに件数・容量・最終更新日をCSVに書き出します(共有のパスは自社のものに置き換えてください)。

powershell
$root = '\\fileserver\share'
Get-ChildItem -LiteralPath $root -Directory | ForEach-Object {
  $files = Get-ChildItem -LiteralPath $_.FullName -Recurse -File -Force -ErrorAction SilentlyContinue
  [pscustomobject]@{
    Folder     = $_.Name
    FileCount  = ($files | Measure-Object).Count
    SizeGB     = [math]::Round((($files | Measure-Object Length -Sum).Sum) / 1GB, 2)
    LastWrite  = ($files | Sort-Object LastWriteTime -Descending | Select-Object -First 1).LastWriteTime
  }
} | Export-Csv -Path .\folders.csv -NoTypeInformation -Encoding UTF8

出てきた一覧に「持ち主」と「扱い」の列を足して、各部署に埋めてもらいます。

扱い 目安 移し先
移す いまも更新されている、業務で開く 部署ごとのサイトや共有ドライブ
保管に回す 数年更新がないが、残す決まりがある 読み取り専用の保管用の場所
捨てる候補 重複、個人の私物、退職者の作業用 持ち主の確認が取れたものだけ消す

「数年」の具体的な線は会社の文書の保存の決まりに合わせ、法令で保存が求められる書類が混ざっていないかを持ち主に確かめてもらいます。捨てる候補は、移行のついでに消すのではなく、確認を取ってから消すという順番を守ります。

権限の棚卸しは、個人ではなくグループで付いているかを確かめる

権限の棚卸しでは、フォルダごとに「誰が・何をできるか」を一覧にし、個人のアカウントに直接付いている権限を、移行先のグループに置き換えられるかを確かめます。NASで個人ごとに付け足してきた権限をそのまま持ち込むと、移行先でも退職や異動のたびに一人ずつ外す運用が続きます。

Windowsのファイルサーバーなら、第2階層までのフォルダのアクセス権を次のように書き出せます。継承されていない(そのフォルダで個別に付けた)権限だけに絞ると、見直すべき場所が分かります。

powershell
$root = '\\fileserver\share'
Get-ChildItem -LiteralPath $root -Directory -Depth 1 | ForEach-Object {
  $path = $_.FullName
  (Get-Acl -LiteralPath $path).Access | Where-Object { -not $_.IsInherited } | ForEach-Object {
    [pscustomobject]@{
      Path     = $path
      Identity = $_.IdentityReference
      Rights   = $_.FileSystemRights
      Type     = $_.AccessControlType
    }
  }
} | Export-Csv -Path .\acl.csv -NoTypeInformation -Encoding UTF8

書き出した一覧から、移行先の権限の対応表を作ります。

NASでの付け方 移行先での置き換え
部署のグループに変更の権限 部署のグループをサイトや共有ドライブのメンバーにする
個人に直接、変更の権限 部署のグループに入れられないか確かめ、無理なら理由を書いて残す
全員に読み取りの権限 全社向けの読み取り専用の場所を別に作る
拒否(アクセスさせない)の設定 拒否を使わず、見せたくないものを別の場所に分ける
取引先など社外の人のアカウント 移行先の外部共有の決まりに沿って、必要な人だけ招待し直す

移行先では、フォルダの途中で権限を付け替えるほど管理が複雑になり、SharePointでは前の節のとおり件数によっては継承を切れないこともあります。権限の違う中身は、同じ場所の中のフォルダで分けるより、サイトや共有ドライブを分けて置くほうが、後の管理が楽になります。

移行先で使えないファイル名と長すぎるパスは、移行の前に直す

ファイル名やパスの問題は、移行ツールに任せて置き換えさせるより、移行の前に持ち主と一緒に直しておきます。ツールが自動で置き換えた名前は、社員が探しても見つからないことがあるからです。

SharePoint・OneDriveでは、" * : < > ? / \ | の文字、名前の先頭と末尾の空白、CON・PRN・AUX・NUL などの予約された名前、~$ で始まる名前などが使えません。デコード後のパスの長さも400文字までです。NASの側で長く深くなったフォルダは、移行先のどこに置くかで長さが変わるため、移行先のサイトのURLの長さも足して考えます。

長すぎるパスは、次のように見つけられます(例では300文字を超えるものを書き出しています。移行先の上限と、移行先の場所のURLの長さから線を決めてください)。

powershell
Get-ChildItem -LiteralPath '\\fileserver\share' -Recurse -Force -ErrorAction SilentlyContinue |
  Where-Object { $_.FullName.Length -gt 300 } |
  Select-Object FullName, @{ n = 'Length'; e = { $_.FullName.Length } } |
  Export-Csv -Path .\long-paths.csv -NoTypeInformation -Encoding UTF8

もう一つ、名前を直すと壊れるものに、Excelのブック同士のリンクと、ショートカットがあります。別のブックを参照している数式や、\\fileserver\share\... を指すショートカットは、移行後には古い場所を見に行きます。持ち主に、参照を持つブックの一覧を作ってもらい、移行後に参照先を直す作業を手順書に入れておきます。

移行ツールは、移行先と規模で選ぶ

移行ツールは、移行先がMicrosoft 365かGoogle Workspaceか、移す量がどれくらいかで選びます。どのツールも、移す前にスキャンして問題を見つける機能と、権限を移す機能を持っているかを確かめてから選びます。

ツール 移行先 向いている規模 公式の資料にある主な点
SharePoint 移行ツール(SPMT) SharePoint、OneDrive、Teams 1台のパソコンから実行できる量 無料。ファイル共有に対応。スキャンのみの実行、ファイル共有の権限の保持、変わった分を探して再実行する設定(1回か連続5回まで)がある
Migration Manager SharePoint、OneDrive、Teams 複数のサーバーで並行して移したい量 SharePoint管理センターから使う。複数のサーバーにエージェントを入れて並行で移す。元のサーバーはSMB 2.0以上が必要
Google Workspace Migrate Google ドライブ(マイドライブ・共有ドライブ) 大量のデータを扱う企業向け 対応するエディションが決まっている。ファイル共有のACLを共有の権限として移せる。隠し属性のファイルとフォルダは移らない
パソコン版のドライブのアプリやブラウザからの手作業のアップロード Google ドライブ・OneDrive 共有が小さく、権限が単純なとき 権限は移らないため、移行先で付け直す

SPMTの設定には、ファイルの作成日や変更日で移す対象を絞る項目、移さない拡張子を指定する項目、無効な文字を置き換えるかどうかの項目もあります。置き換えをオフにすると名前に問題のあるファイルはスキップされるため、スキャンの結果で問題がなくなってから本移行に入ります。

Workspace Migrateでファイル共有をつなぐときは、UNCパスで指定し、接続に使うアカウントには対象全体に対する完全な制御の権限が要ると案内されています。どのツールでも、移行に使う管理者のアカウントは移行の期間だけ用意し、終わったら権限を外します。

本移行は、先に大半を移し、切り替えの日には差分だけを移す

本移行は、切り替えの日の数日前までに大半のファイルを移しておき、切り替えの日には、その後に変わった分だけを移します。全部を切り替えの日に移すと、移し終わるまで社員がファイルを触れない時間が長くなります。

進め方の流れです。

  1. 試しの移行で、1つの部署の分を移すのにかかった時間を測る
  2. その時間から、本移行の初回の実行を切り替えの日の何日前に始めるかを決める
  3. 初回の実行の後も、社員はNASで仕事を続ける
  4. 切り替えの日に、NASの共有を読み取り専用にする
  5. 前回から変わった分だけを移す(SPMTなら再実行、変更日で絞る設定でも可)
  6. 移行ツールのレポートで、失敗やスキップがないかを確かめる

Google ドライブへ移す場合は、1ユーザーが24時間に移せる量の上限(750GB)が、移行に使うアカウントにもかかるかどうかを、使うツールの資料で確かめておきます。量が多いときは、初回の実行を何日かに分ける前提で日程を組みます。

切り替えの日は締めの日を避け、旧共有を読み取り専用にする時刻を先に決める

切り替えの日は、月末・月初の締めや請求の発行の日を避け、旧共有を読み取り専用にする時刻と、社員が新しい場所で仕事を始める時刻を先に決めて知らせます。読み取り専用にしないまま差分を移すと、移している間にNAS側で更新されたファイルが取り残されます。

当日の流れの例です。時刻は会社の勤務時間に合わせて置き換えてください。

時点 作業 社員への知らせ
前日の終業時 NASの共有を読み取り専用にする 「明日の朝から新しい場所で作業」の告知
夜間 差分を移し、レポートで失敗を確かめる ―
当日の始業前 部署ごとに数フォルダを開き、件数と権限を確かめる ―
当日の始業時 社員のパソコンのネットワークドライブの割り当てを外し、新しい場所へのショートカットを配る 新しい場所の開き方の案内
当日の日中 問い合わせの窓口を開けておき、見つからない・開けないを受ける 窓口の連絡先

社員の割り当て済みのドライブ(Zドライブなど)を外さないままにすると、読み取り専用の旧共有に保存しようとして失敗する問い合わせが続きます。外すのが難しい場合は、旧共有の最上位に「移行しました」と書いたファイルを置き、新しい場所を案内します。

切り替えたあとに確かめることと、旧環境を止める時期

切り替えたあとは、件数・権限・社外との共有の3点を確かめ、旧環境は読み取り専用のまま一定期間残してから止めます。移し漏れに気づくのは、月末の処理や年に一度の作業のときであることが多いからです。

  1. 件数と容量:棚卸しの一覧と、移行先のフォルダごとの件数・容量を比べる。差があれば、移行ツールのレポートでスキップされたファイルを探す
  2. 権限:部署ごとに、見えてはいけない人に見えていないか、見えるべき人に見えているかを、実際のアカウントで確かめる
  3. 社外との共有:取引先に渡していたフォルダは、移行先で招待し直したかを持ち主に確かめる
  4. 参照の直し:Excelのブック同士のリンクと、業務システムが読み書きしていたフォルダの参照先を直す
  5. 旧環境の扱い:読み取り専用で残す期間(例えば、次の決算や年次の処理を一度通るまで)を決め、その後にバックアップを取ってから止める

業務システムがNASのフォルダにファイルを書き出していたり、複合機のスキャンの保存先がNASになっていたりすると、ファイルの移行だけでは片付きません。棚卸しの段階で「人以外にNASを読み書きしているもの」も一覧にしておくと、切り替えの日に止まる業務を減らせます。社内のデータの置き場所を、業務システムやデータの集計とあわせてクラウドで組み直したい場合は、クラウドの基盤づくりの窓口からご相談いただけます。

移行計画の根拠にしたページ(閲覧日:2026年10月3日)

製品の上限と機能はたびたび更新されます。移行の計画を固める前に、各ページの最新の数字を見直してください。

よくある質問

NASの中身をそのままクラウドストレージにコピーすれば移行は終わりますか?

ファイルは移りますが、NASのフォルダに付いていた権限、長すぎるパスや使えない文字を含む名前、Excel同士のリンクなどは、そのままでは移りません。コピーの前に、フォルダの一覧と権限の一覧を作り、移行先で使えない名前を直してから、移行ツールで権限ごと移すのが確実です。

SharePointとGoogle ドライブの共有ドライブは、どちらに移すべきですか?

社員が毎日使っているメールと表計算の環境に合わせるのが基本です。Microsoft 365を使っていればSharePoint(Teams)、Google Workspaceを使っていれば共有ドライブにすると、権限のグループや開くアプリを1つにまとめられます。どちらも1か所に入れられる件数などの上限があるため、部署や用途ごとに分けて作ります。

切り替えの日に、全部のファイルを一度に移す必要がありますか?

一度に移すと、その間ずっと社員がファイルを触れなくなります。数日前までに大半を移しておき、切り替えの日は旧共有を読み取り専用にしてから、その後に変わった分だけを移す形にすると、止める時間を短くできます。移行ツールには、前回から変わった分だけを移し直す機能があります。