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中小企業の業務システムの要件定義書の書き方。業務フロー・画面一覧・帳票一覧・非機能要件・受け入れ基準を、発注者が埋められる型で

中小企業が業務システムを発注するときの要件定義書の書き方を、そのまま埋められる型でまとめます。章立て、業務フローの表、画面一覧と帳票一覧の番号の振り方、非機能要件の6分類、受け入れ基準の書き方、未決事項の残し方まで。

この記事の結論:要件定義書を中小企業の業務システムのために書くなら、①目的と範囲、②用語、③業務フロー、④機能一覧、⑤画面一覧、⑥帳票一覧、⑦データ項目、⑧外部とのやり取り、⑨非機能要件、⑩受け入れ基準、⑪未決事項の11の章立てを先に作り、分かる所から埋めていくのがいちばん崩れない書き方です。発注する側が書くべきなのは、業務フロー・画面一覧・帳票一覧と、「これができれば合格」という受け入れ基準の4つで、業務フローの手順に振った番号を画面・帳票・受け入れ基準でも使い回すと、抜けと食い違いが見つけやすくなります。非機能要件は、IPAの非機能要求グレードの6つの大項目に沿って、決めたことと決めていないことを分けて書きます。

この記事は、業務システムの開発を外部に頼むことになり、要件定義書の下書きを自分たちで作ろうとしている会社の担当者に向けた、文書の型の話です。要件定義の前に何を準備するかや、開発会社との契約の形は扱いません。ここで扱うのは、書き始めるときの章立てと、各章の表の列、埋めるときの書き方です。例は、受注から請求までを1つの業務システムにまとめる場面を、架空の業務として置いています。

要件定義書は11の章立てを先に作り、分かる所から埋める

要件定義書は、頭から順に書こうとすると、業務フローの途中で手が止まります。先に章立てだけを作り、それぞれの章に「誰が埋めるか」を書いておきます。

章 書くこと 主に埋める人
1. 目的と範囲 システムで解決したいこと、対象にする業務と対象にしない業務 発注する側
2. 用語 社内の言葉の意味(「受注」「出荷済み」がどの状態を指すか) 発注する側
3. 業務フロー 担当ごとに、何をきっかけに何をして、次へ回すか 発注する側
4. 機能一覧 業務フローの各手順で、システムにしてほしいこと 両方
5. 画面一覧 画面ごとの目的、使う人、主な操作 発注する側が下書き、開発会社が整える
6. 帳票一覧 出力する書類、出すタイミング、渡す相手 発注する側
7. データ項目 帳票と画面に出てくる項目の意味と決まり 両方
8. 外部とのやり取り 会計ソフトや決済、メールなど、つなぐ相手と渡すもの 両方
9. 非機能要件 使う時間帯、止まったときの扱い、守ること 両方
10. 受け入れ基準 何ができれば合格とするか 発注する側
11. 未決事項 まだ決まっていないこと、決める人と期限 両方

表紙には、版、更新日、作った人、承認した人の欄を付けます。要件定義書は打ち合わせのたびに変わる文書なので、変更の履歴(いつ、どの章を、なぜ変えたか)を最後の頁に足していきます。

章立ての考え方は、IPAの「ユーザのための要件定義ガイド 第2版」が、要件定義を業務の要件・システムの要件・要件定義の進め方の管理に分けて整理しているものと方向は同じです。ただ、ガイドは大規模な開発も含めた内容なので、中小企業の規模では章を絞り、表の列を少なくした上の型から始めるほうが書き切れます。

要件定義書の業務フローは手順の表で書き、番号を振る

業務フローは、担当者ごとの列に分けた図(スイムレーン図)で描くこともできますが、発注する側が最初に作るなら、手順の表のほうが書きやすく、抜けにも気づきやすくなります。

番号 担当 きっかけ 作業 使う画面・帳票 例外
F-01 営業 取引先から注文のメールが届く 注文の内容を登録する SC-02 受注登録 在庫が足りない場合は F-01a へ
F-01a 営業 在庫が足りない 納期を取引先に確認し、分納にするか決める SC-02 受注登録 —
F-02 倉庫 受注が登録される 出荷の準備をして、出荷済みにする SC-04 出荷一覧、CH-02 納品書 欠品が見つかった場合は営業に戻す
F-03 経理 月末 出荷済みの受注から請求書を作る SC-06 請求作成、CH-03 請求書 値引きがある場合は営業に確認する

書くときのコツは3つです。

  • 例外の列を空けておかない。 「いつもはこう」より、「こういうときはこう」のほうがシステムの作りを大きく変えます。思いつかなければ「なし」と書き、空欄と区別する
  • 今の流れと、システムにした後の流れを別の表にする。 今の流れには「Excelに転記する」「上長に紙で回す」のような手順が残っているはずで、それがシステムでなくなる手順です
  • 番号は消さずに残す。 手順をやめたら「廃止」と書き、番号を別の手順に使い回さない。画面一覧や受け入れ基準から参照しているからです

画面一覧と帳票一覧は、業務フローの番号とつないで書く

画面一覧と帳票一覧は、画面の見た目を描く場所ではありません。「この業務の手順に、この画面が要る」という対応を示す場所です。業務フローの番号を列に入れておくと、どの手順にも出てこない画面や、画面のない手順が一目で分かります。

画面一覧の例です。

番号 画面名 目的 使う人 主な操作 業務フロー
SC-01 ログイン 社員を確かめる 全員 ログイン、パスワードの再設定 —
SC-02 受注登録 注文の内容を入れる 営業 登録、取引先の検索、下書き保存 F-01、F-01a
SC-04 出荷一覧 出荷を待つ受注を見る 倉庫 絞り込み、出荷済みにする F-02
SC-06 請求作成 月の請求をまとめる 経理 対象の選択、請求書の出力 F-03

帳票一覧の例です。

番号 帳票名 出すタイミング 渡す相手 形式 業務フロー 今使っている見本
CH-02 納品書 出荷済みにしたとき 取引先 PDF F-02 添付2(今のExcelの様式)
CH-03 請求書 月末の請求作成 取引先 PDF、メールで送付 F-03 添付3
CH-05 月次売上表 月初 社内(役員) CSV — 添付5

帳票一覧の最後の列に、今使っている様式の見本を必ず付けます。帳票の欄には、法律で載せる決まりのある項目(請求書の登録番号など)や、取引先との約束で入れている欄が含まれていることがあり、見本がないと開発会社は気づけません。

データ項目は、帳票と画面の欄から逆算して書き出す

データ項目の章は、データベースの設計図ではなく、「この項目は何を意味し、どういう決まりがあるか」を書く場所です。帳票の見本と画面一覧に出てくる欄を全部書き出し、意味の同じものをまとめると、項目の一覧ができます。

項目 意味 必須 決まり 出てくる所
受注番号 受注を1件ずつ見分ける番号 ○ システムが自動で振る。年が変わっても連番を戻さない SC-02、CH-02、CH-03
取引先 注文をくれた会社 ○ 取引先の一覧から選ぶ。手で入れさせない SC-02、CH-02、CH-03
納品先 品物を届ける場所 ○ 取引先と違う場合がある。1つの受注に1か所 SC-02、CH-02
出荷日 倉庫から出した日 出荷済みのとき○ 未来の日付は入れられない SC-04、CH-02
値引き額 受注全体からの値引き — 入れられるのは営業の責任者だけ SC-02、CH-03

「決まり」の列がいちばん大事です。「手で入れさせない」「入れられるのは責任者だけ」のような決まりは、画面の作りと権限の両方に効きます。型や桁数が分からなければ空けておき、開発会社と一緒に埋めます。

非機能要件は、IPAの非機能要求グレードの6分類で漏れを確かめる

非機能要件は、機能以外の「どのくらい止まらないか」「どのくらい速いか」「どう守るか」といった要件です。IPAの非機能要求グレードは、これを可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、セキュリティ、システム環境・エコロジーの6つの大項目に分けて整理しています。中小企業の業務システムでは、238ある指標を全部埋める必要はなく、6つの大項目ごとに「決めたこと」と「決めていないこと」を書き分ければ、漏れの確かめとして十分に使えます。

大項目 中小企業の業務システムで書くことの例
可用性 使う時間帯(例:平日の始業から終業まで)、止まったときに手作業で続ける方法、復旧までに待てる時間の目安
性能・拡張性 同時に使う人数、1日に入る件数、今後増える見込み
運用・保守性 バックアップを取る頻度と戻せる時点、障害の連絡先と受付時間、問い合わせの窓口
移行性 今のExcelや旧システムから移すデータの範囲、切り替えの時期
セキュリティ 社外から使うか、使う人ごとの権限、操作の記録を残す期間、個人情報の有無
システム環境・エコロジー 使う端末とブラウザ、スマホで使う画面があるか

例の中の時間帯や頻度は、会社ごとに決めるものです。数字が決まらないときは、「月末の請求作成の日は止まると困る」のように、困る場面を書いておくだけでも、開発会社が構成と費用を考える材料になります。決めていない大項目は、未決事項の章に移します。

受け入れ基準は「前提・操作・結果」の3つで、確かめられる文にする

受け入れ基準は、できあがったシステムを受け取るときに、合格かどうかを決める条件です。「使いやすいこと」「速いこと」のような書き方では、合格かどうかを誰も決められません。前提・操作・結果の3つに分け、試せば必ず白黒がつく文にします。

番号 業務フロー 前提 操作 結果
AC-01 F-01 営業の権限でログインしている 受注登録で取引先を選び、必須の項目を入れて登録する 受注番号が振られ、出荷一覧に「出荷待ち」で出る
AC-02 F-01 営業の権限でログインしている 出荷日に明日の日付を入れて登録する 登録できず、出荷日の欄に理由が出る
AC-03 F-03 当月に出荷済みの受注が3件ある取引先がある 請求作成でその取引先を選び、請求書を出力する 3件の明細が載った請求書のPDFが出て、登録番号が載っている
AC-04 — 一般の社員の権限でログインしている 受注登録で値引き額の欄を開く 値引き額の欄が入力できない

書き方のコツは、うまくいく場合と同じ数だけ、うまくいかない場合(AC-02、AC-04)を書くことです。入れてはいけない値をはじく動きや、権限のない人にさせない動きは、書いておかないと試験から漏れます。業務フローの番号を入れておけば、受け入れ基準が1つもない手順も見つけられます。

決まっていないことは、未決事項の表に決める人と期限を付けて残す

要件定義書を書き終える時点で、すべてが決まっていることはまずありません。決まっていないことを本文の中に「要検討」と散らして書くと、そのまま開発が始まり、後から作り直しになります。未決事項は1つの表に集めます。

番号 内容 関係する章・番号 決める人 期限 決まったこと
TBD-01 分納の請求を、出荷ごとにするか月末にまとめるか F-01a、F-03、CH-03 経理の責任者 開発の見積もりの前 (決まったら書く)
TBD-02 社外からスマホで出荷一覧を見る必要があるか SC-04、非機能(セキュリティ) 倉庫の責任者 画面の設計の前

期限は日付でなく「何の前までに」で書いても構いません。決まったら行を消さずに「決まったこと」の列を埋め、本文の該当する章に反映して、変更の履歴に残します。

株式会社bundlyzeでは受託する業務システムの仕事で要件の整理から開発、保守運用までを担っており、この記事の型は、作る側が見積もりと設計に入るときに受け取りやすい形を意識して組み立てたものです。下書きを作ったあと、作る側の目で抜けを確かめたい場合は、受託開発(業務システム)の案内ページで受け付けています。

要件定義書を書き上げたら、開発会社に渡す前に確かめる5つのこと

下書きができたら、開発会社に渡す前に、次の5つを自分たちで確かめます。

  1. 業務フローのどの手順にも、画面か帳票か「システム外」の印が付いているか。 何も付いていない手順は、作るのか作らないのかが決まっていない
  2. 画面一覧と帳票一覧のどの行にも、業務フローの番号が入っているか。 番号のない画面は、何のために作るのかを説明できるかを確かめる
  3. 受け入れ基準が、主な手順ごとに、うまくいく場合とうまくいかない場合の両方あるか
  4. 用語の章の言葉が、本文の中で同じ意味で使われているか。 「受注」と「注文」、「出荷」と「発送」が混ざっていないか
  5. 未決事項に、決める人と期限が入っているか

この5つを確かめた下書きなら、開発会社との打ち合わせは「何を作るか」の確認から始められ、「何を言いたいのか」の聞き取りに時間を使わずに済みます。

参考にしたIPAの資料(確認日 2026-10-03)

よくある質問

要件定義書は、発注する側が全部書かなければいけませんか?

全部を書く必要はありません。業務フローと、画面・帳票に何が要るか、受け入れ基準の元になる「これができれば合格」は、業務を知っている発注する側でなければ書けません。データの型や非機能要件の数値の詰め、技術の選び方は、開発会社と一緒に埋めるのが一般的です。

要件定義書はExcelとWordのどちらで書くのがよいですか?

形式より、版の管理ができるかどうかで選びます。画面一覧や帳票一覧のような一覧は表計算のほうが扱いやすく、業務フローや方針の説明は文書のほうが読みやすいので、両方を使って、表紙に版と更新日、変更の履歴を付けておく形が扱いやすくなります。

受け入れ基準は、いつまでに書けばよいですか?

開発会社に見積もりを頼む前に、主な業務フローの分だけでも用意しておくのがよいでしょう。合格の条件が決まっていると、作る範囲と試験の手間が見積もりに入るので、後から「それは含まれていない」という食い違いが減ります。