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総務・人事への社内問い合わせ、AIチャットボットで答える仕組みの作り方。規程集の整え方、答えられない質問を担当者へ引き継ぐ流れ、雇用区分と役職での見せ分け

総務・人事に届く社内の問い合わせを、AIチャットボットで受けて答える仕組みの作り方です。規程集を条ごとに整える方法、答えられない質問や相談を担当者へ引き継ぐ流れ、正社員・パートや管理職で答えを見せ分ける設計をまとめます。

この記事の結論:総務・人事への社内問い合わせ対応をAIチャットボットで受け持たせるなら、AIに答えさせるのは「規程を読めば答えが決まる質問」だけにし、①規程集を条ごとに分けて、雇用区分・施行日・担当部署の情報を付ける、②その人の状況しだいで答えが分かれる質問と相談は、AIに答えさせずに担当者へ引き継ぐ、③正社員・パート・管理職といった区分ごとの見せ分けは、人事の台帳の情報を使ってサーバーの側でかける、の3つを先に作ります。答えの文には、根拠にした規程の条と施行日を必ず付けます。

少人数の総務・人事で全社からの質問を受けている会社が、社内向けのAIチャットボットを用意するときを想定して書いています。文書を検索してAIに答えさせる仕組み(RAG)の部品の組み方は、索引・権限・同期の作りをまとめた記事に譲り、ここでは総務・人事の問い合わせならではの部分に絞ります。

総務・人事への問い合わせは、3種類に分けてから答え方を決める

総務・人事に届く問い合わせは、答えの決まり方で3種類に分かれます。AIに任せられるのは、このうち1種類だけです。

種類 例 答え方
A. 規程を読めば答えが決まる 慶弔休暇は何日か、交通費の申請の締め日、住所が変わったときの届け出 AIが規程の条を根拠に答える
B. 個人の事情で答えが変わる 自分の有給はあと何日か、自分の給与のこの控除は何か、育児休業はいつから取れるか AIは答えず、担当者に引き継ぐ。手続きの一般的な流れだけ案内する
C. 相談 上司との関係、体調、家族の事情、職場での困りごと AIは中身に答えず、相談の窓口を案内する

Bは、規程の一般論で答えると、その人には当てはまらない答えになることがあります。たとえば育児休業の時期は、本人の状況と手続きの進み具合で変わります。Cは、答えの正しさより、話を聞いてもらえることと秘密が守られることが大切な問い合わせです。

この分け方を、チャットボットの最初の判定として組み込みます。質問を受けたら、まず種類を判定させ、Aのときだけ規程の検索と答えの作成に進みます。

json
{
  "category": "B",
  "reason": "本人の有給の残り日数を聞いており、個人の記録が必要",
  "topic": "年次有給休暇",
  "handoff_to": "人事",
  "general_guidance": "有給の残り日数は、勤怠の画面か人事の担当者に確かめてください"
}

判定に迷うものは、Bとして扱わせます。Aと誤って答えるより、担当者に回したほうが害が小さいからです。

規程集は、条ごとに分けて、当てはまる人と施行日を付ける

AIの答えの質は、規程集の整え方でほぼ決まります。規程の文書をそのまま読ませるのではなく、条ごとに分け、それぞれに「誰に当てはまるか」「いつから効いているか」を付けて持ちます。

条ごとに持つ情報の例です。

項目 例 使い道
規程の名前と条の番号 就業規則 第32条(慶弔休暇) 答えの根拠として示す
当てはまる雇用区分 正社員、契約社員(パートは別の規程) 質問した人に当てはまる条だけを探す
施行日と改定の履歴 2026年4月1日施行 新しい版だけを根拠にする
見てよい役職 全員、または管理職以上 管理職向けの運用の決まりを一般の社員に出さない
担当の部署 人事、総務、経理 引き継ぐ先を決める
関係する様式 慶弔休暇の届け出の様式 答えに、出すべき書類を添える

整えるときに気をつけることは、次の4つです。

  • 正本を1つにする。 就業規則の本文が正本で、社内のQ&Aや説明資料は補足として扱う。食い違ったら、本文を根拠にする
  • 雇用区分ごとの規程を混ぜない。 パートタイムの社員向けの規程や、契約社員向けの別の定めがあれば、それぞれ別の文書として持つ
  • 別表を本文とつなぐ。 「別表1のとおり」と書かれた条は、別表の中身と一緒にしないと、AIが答えを作れない
  • 古い版は、検索の対象から外す。 改定前の条が残っていると、新旧の両方を根拠にした答えが返る

規程を改定したら、条の情報を直すところまでを改定の作業に含めます。規程の担当者が改定の手順の最後に「チャットボットの規程集を直す」を加えておくと、直し忘れが減ります。

なお、AIで答えられるようにしても、規程の周知の代わりにはなりません。労働基準法は、就業規則を作業場の見やすい場所に掲示する、書面を交付するといった方法で、労働者に周知させることを求めています。規程の本文は、チャットボットとは別に、社員がいつでも読める場所に置いておきます。

答えには、根拠の条と施行日と、当てはまる区分を付ける

Aの質問に答えるときは、答えの文の後ろに、根拠にした条と施行日、どの雇用区分に当てはまる答えかを必ず付けさせます。

答えの形の例です。

慶弔休暇は、本人の結婚のときに5日取れます。

根拠:就業規則 第32条(2026年4月1日施行) この答えは「正社員」に当てはまる内容です。 届け出:慶弔休暇の届け出の様式を、人事に出してください。

(日数や条の番号は、形を示すための例です。)

根拠の条を示すと、質問した人が自分で本文を確かめられ、担当者もAIが誤った条を使っていないかを後から見られます。根拠になる条が見つからないときは、推測で答えさせず、Bと同じように担当者へ引き継がせます。

答えられない質問は、文脈ごと担当者に引き継ぐ

引き継ぎは、「担当者に聞いてください」と返して終わりにすると、質問した人がもう一度最初から説明することになります。チャットボットが受け取った内容を、担当者が続きから対応できる形で渡します。

引き継ぎのときに担当者へ渡す項目です。

項目 中身 注意
質問した人 社員番号、部署、雇用区分 担当者が台帳を開く手がかりにする
質問の文 質問した人が書いた文 Cの相談のときは渡さない(後述)
種類の判定と理由 B、または根拠が見つからなかったA 判定の誤りを見直す材料にする
AIが探した条 検索で見つかった条の番号 担当者が規程を開く手間を減らす
引き継ぎ先 人事、総務、経理 条の「担当の部署」から決める
返す期限の目安 社内で決めた日数 質問した人にも、いつごろ返るかを伝える

引き継ぎは、総務・人事が普段使っている受付の仕組み(問い合わせの管理表や、社内のチケットの仕組み)に1件として登録します。チャットボットの画面の中だけで担当者が返事をする作りにすると、担当者が見る場所が増え、返し忘れが起きます。

担当者が返した答えのうち、ほかの人にも当てはまるものは、規程のQ&Aの候補として残します。週に1回、候補を見て、規程の補足に足すかを決めると、Aで答えられる範囲が少しずつ広がります。

相談は、中身を残さず窓口へ案内する

Cの相談は、引き継ぎの流れに乗せません。チャットボットは、相談の窓口の名前と連絡の方法を案内するだけにし、相談の文面を質問の記録にも、引き継ぎの票にも残さない作りにします。

厚生労働省は、職場のハラスメントの防止のために事業主が講じるべき措置として、相談した人や行為者のプライバシーを守るために必要な措置をとることを挙げています。チャットボットの記録は、仕組みの担当者や開発者が見られる場所に残ることがあります。相談の中身がそこに残らないようにすることが、プライバシーを守る作りの第一歩です。

体調や家族の事情のように、要配慮個人情報にあたりうる内容も、同じ扱いにします。Cと判定したら、質問の文は記録の前に捨て、「相談の案内をした」という事実だけを残します。

それでも、最初の判定のために、質問の文はいったん生成AIのサービスに届きます。社員の個人データが含まれうる以上、2023年に個人情報保護委員会が出した注意喚起のとおり、渡した内容が返答づくり以外、とくにモデルの学習に回らないかを事前に確かめる必要があります。判定に使うAPIの契約と設定で学習利用が止まっていることを、作り始める前に見ておきます。

雇用区分と役職での見せ分けは、人事の台帳から取り出してかける

正社員とパートで答えが違う、管理職だけが見てよい運用の決まりがある、という見せ分けは、質問した人の雇用区分と役職を、人事の台帳からサーバーの側で取り出して使います。画面で区分を選ばせたり、質問の文から推測させたりはしません。

見せ分けの組み合わせを、先に表にしておきます。

規程の条 正社員 契約社員 パート 管理職 人事の担当者
就業規則(全員に当てはまる条) 見る 見る 見る 見る 見る
正社員だけに当てはまる条 見る 見ない 見ない 見る 見る
パートタイムの社員向けの規程 見ない 見ない 見る 見る 見る
管理職向けの労務管理の手引き 見ない 見ない 見ない 見る 見る
人事の内部の運用の手順 見ない 見ない 見ない 見ない 見る

管理職の列に「見る」が多いのは、部下の雇用区分に応じて答える必要があるためです。ただし、管理職が自分のこととして質問したときには、自分の雇用区分に当てはまる条を根拠にさせます。答えの文に「この答えは〇〇に当てはまる内容です」と区分を書かせているのは、このためです。

見せ分けを検索の段階でかける実装の考え方は、冒頭で紹介した記事に書いたとおりです。総務・人事の場合に足しておきたいのは、人事の台帳の区分が変わったときの扱いです。パートから正社員になった、管理職になった、という変更が台帳に入った時点で、チャットボットの側の区分も変わるように、台帳を正本にして毎回そこから読みます。チャットボットの側に区分を写して持つと、変更が反映されないまま古い区分で答えます。

人事の台帳や受付の仕組みとつなぐ前提に立つと、AIのチャットボットも業務システムの一部です。そこで株式会社bundlyzeでは、台帳や受付の仕組みと社内向けのAIを一続きのものとして設計する考え方をとっています。要件定義に始まり、作った後の保守運用までを担う業務システムの開発の立場からの判断です。

小さく始める手順

最初は、問い合わせの多い規程から始めます。

  1. この半年ほどの問い合わせを、A・B・Cに分けて数える。 Aが多い規程から対象にする
  2. 対象の規程を条ごとに分け、雇用区分・施行日・見てよい役職・担当の部署を付ける
  3. 最初の判定(A・B・C)と、Cの文を残さない作りを先に入れる
  4. 引き継ぎを、普段の受付の仕組みに登録する作りにする
  5. 区分ごとのテスト用の利用者で、見てはいけない条が答えに出ないことを確かめる
  6. 1か月ほど使い、引き継ぎになった質問を見て、規程の補足とQ&Aを足す

規程集の整理から、引き継ぎや見せ分けを含めた仕組みづくりまでをまとめて進める場合は、AIを業務の流れに組み込む支援の案内をご覧ください。

根拠にした法令と公的な資料

ここに挙げたものは、2026年10月3日時点で内容を見ています。法令や指針は改正が入るので、規程や仕組みに反映するときは施行中の版を当たってください。

よくある質問

就業規則をAIチャットボットで答えられるようにすれば、社員への周知になりますか?

なりません。労働基準法は、就業規則を見やすい場所への掲示や書面の交付などで労働者に周知することを求めています。AIの答えは、周知された規程を探しやすくする補助として位置づけ、規程そのものはいつでも読める場所に置いておきます。

ハラスメントの相談も、AIチャットボットで受けてよいですか?

相談の中身をAIに答えさせるのは避けます。チャットボットは、相談の窓口と連絡の方法を案内するところまでにし、相談の文面を記録やAIに残さない作りにします。相談した人のプライバシーを守ることは、事業主が講じるべき措置の一つとされています。

パートの社員と正社員で規程が違う場合、どう答え分けますか?

規程の条ごとに「どの雇用区分に当てはまるか」の情報を付け、質問した人の雇用区分を人事の台帳から取り出して、当てはまる条だけを根拠にします。質問した人に雇用区分を選ばせる作りにはしません。